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第六話 ~ダートの妹(?)登場~

 「勝てるのか・・・。こんなの・・・」

 目の前の現実を見て脱力し、危うく体が崩れ落ちてしまいそうになったところを狼夜は隣から支えになってくれて体制を保つことができた。
 サイクロプス、ルンダダンジョンの最深部に潜むボスモンスター。一体相手ならどうにでもなる、だが今回は現れた数が2桁になるくらい数が多い。複数に攻撃をされてしまえばまず命を落としかねない。
 ジャイアントヘッドレス、コイルダンジョンの奥にいるボスモンスター。こちらも同じく一体ならどうにでもなる相手。これもサイクロプスと同じ数がいる。複数で攻撃を仕掛けても流石に勝てるかわからない。
 二体の共通点といえば、大きく言って二つある。まず行動パターンが良く似ていて使用するスキルも同じと言っても過言ではない。
 そしてもう一つの共通点、それは。

 “どちらともイメンマハを超えてダンバートンにやってきたということ”

 普通ならダンジョンからモンスターが出てくることは稀にある。そういうときはその近くの町の聖堂の司祭が女神の像の修復によって事なきを得るのである。
 しかし、今回はどうであろう。ルンダダンジョンとコイルダンジョンを抜け出してきたボスモンスターが、なぜセンマイ平原を超えてダンバートンに来たか。まったくもって謎だった。

 「犬っ、とりあえずその狼と一緒に引けっ」

 いつの間にか隣には赤い格好が目立つダートとアオシ君が弓を構えていた。弦を限界まで引き、マグナムショットを今にも撃とうとしていた。そしてその二人の後ろにはラオがアイススピアを詠唱していた。この三人でこいつらを食い止めてほかの人たちは一度逃げるという作戦だと察しがついた。
 僕は恐怖と対立するかのように震える手でワンドを取り出しサンダーの詠唱を始めた。

 「だ、ダートや・・・アオチーにラオだけだったら・・・、さ、三人が危ない、からね・・・」
 「やけどもなっ、そんな震えとる体で魔法が撃てるんかっ?大人しく言うことを聞け、また体制を整えて後から来いっ」
 「俺のアイススピアで動きを止めながら一緒に逃げるから、早く逃げろ」
 「一応接近されても近接スキルにも慣れてるから、早く皆のところへ行って」
 「俺、先に行ってるぞ! この状況把握してくる!」

 狼夜は先にダンバートンの方へ走って行った。その間にもアオシ君やラオにも促されるが、僕は詠唱をやめないでサンダーの結晶をワンドに集めた。こうしている間にも、巨大亜人族はダンバートンに向けて進軍を開始した。

 「三人に・・・い、いい格好、させられないよ・・・ぼ、僕だってっ・・・戦えるんだからっ!」

 ライトニングワンドに集まったサンダーのマナは限界になり、詠唱が完了した。そして勢いのまま僕は巨人達に向けてサンダーを放った。
 電撃は目の前にいた一体のサイクロプスに命中し、拡散してほかの数体にも命中し、動きを止めた。そしてその動きが止まったモンスターの頭上にどす黒く怪しい雲が現れ、4秒後、落雷がモンスターを襲った。激しい音を上げて落雷は五回ほど落ち、モンスター達にダメージを与えた。
 しかし、流石はボスモンスターと言うべきだろうか、すぐに立ち上がってこちらに向かってくる。
 だが、こちらも一人ではない。サンダーを食らったサイクロプスやジャイアントヘッドレスに向かって矢が飛び、激しく吹き飛ばす。ダートとアオシ君のマグナムショットだ。
 矢を食らった対象は立ち上がることなく戦闘不能になったようだが、後ろにはまだ沢山の控えがいる。僕やラオのマナやダートとアオシ君の矢が先になくなるか、それとも控えが先になくなるか。持久戦になってしまいそうだ。

 「あっ!」

 と思っている間にダートの方から声が聞こえてきた。僕やアオシ君、ラオは何事かと思いダートの方を向くと。

 「わり、矢の補充忘れた。もう残り少ないわ」
 「あ、オレもだ」

 絶体絶命断崖絶壁運命の瀬戸際(もう何を言ってるのかサッパリ)。持久戦もこちらが先に尽きることが目に見えた。僕とラオは絶句し、詠唱した魔法も撃たずに呆けていた。

 「とりあえず、オレは二人を援護する」
 「お、おぅ。俺も援護するで」

 弓と両手剣を持ち替えてダートとアオシ君は僕とラオの前衛に出た。ラオがこうしてはいられないといわんばかりにアイススピアを放つ。射程距離が短いアイススピアでも。一気に攻めてくる相手ならば有効だった。ざっと数えて十体は凍り、動きが止まった。その隙に僕もサンダーを詠唱する。が。

 「ぁ、あれ・・・?」

 サンダーのマナを作ろうとするが、うまくいかない。すべてライトニングボルトに切り替わってしまう。そこで思い出した。一度ワンドを手放してしまって体中のマナがなくなっていたことに。マナポーションだって持ち合わせていなかった。

 「犬っ!もしかしてもしかすると?!」
 「その、もしかするんだよ・・・ごめん・・・・・・」

 僕はただ謝り、ワンドを手放し、落としてしまったメイスを拾い上げる。再び体中のマナがなくなり気分が悪くなる。体はふらつくが、動けないわけでもない。鈍器を扱う構えをし、戦闘態勢をとる。

 「とりあえず、ここは持久戦っちゅーこっちゃな・・・」
 「そのようだね、先に体力切れちゃうかもしれないけど頑張るよ・・・」
 「そうなる前に危なくなったら逃げてね、ダートンも」

 僕とダートとアオシ君は、三人で進行してくる巨人に立ち向かった。必死に攻撃を避けて一生懸命スマッシュやウィンドミルで応戦してる僕達に、休みなど知らないといわんばかりに後方からラオの援護射撃が飛んでくる。すべて倒せるとは言い難いが、確実に潰して行っている。援軍が来れば後は任せられる。自然とそんな期待をしていた。
 しかし、現実はそう甘くなかった。
 ダンバートンから狼夜が戻ってきて援軍を引き連れてきたのかと思いきや、僕らのそばにやってきて第一声が。

 「北の方でまた亜人族やアンデッドが現れたから援軍は出せないって!」
 「な、なんだってっ!」
 「マジかよ・・・」
 「そ、そんな!」
 「やられちまったな・・・」

 どうやらまた北の方から魔族が現れてきたらしい。そちらの応戦に向かっていて誰一人こちらにこれない情報だった。巨人と応戦していた四人はそれぞれに驚きや失望の言葉を呟いていた。

 「も、もう勝ち目ないわ・・・こりゃ・・・」
 「せめてもうしばらく耐えてみる・・・?」
 「ダメだ、俺のマナもそろそろ持たない・・・これ以上魔法は無理だ」
 「ぼ、僕は・・・スタミナ的に・・・無理・・・」
 「俺は夜にならないと戦力になれないのでな・・・」

 四人と一匹は絶望を感じていた。
 しかしだ、その四人と一匹の近くを二つの影がガイレフ方面へと飛んでいった。
 何事かと思い、そこにいた者は皆影の方を向いた。そこには。
 赤いコートを着て腕にシリンダーを装備した赤い髪の女性と、藍の色をした浴衣を着て脇差を逆手に持つ黒い髪の男性がいた。
 巨人達は、自分達の進行方向にいる邪魔者を排除するためだろうか、目標を僕達ではなくその男女に目をつけたらしい、前衛にいたサイクロプスはその太い腕を大きく振りかぶって目の前にいる二人にめがけて拳を振り下ろした。
 しかし、脇差を逆手に構えた男性は、その攻撃が来るのを待っていたかのように落ち着いた動きで飛んできた拳を避け、一瞬でサイクロプスの距離を縮め、カウンターを決める。カウンターを食らったサイクロプスはそのまま倒れて起き上がることなく戦闘不能になった。
 その間に赤いコートを着た女性は膝をついて地面に何かをしていた。その動きを危険と感じ取ったのか、すぐ近くのジャイアントヘッドレスが数体ほど女性の方へ向かっていった。しかしその女性は立ち上がるとバックステップで数歩分距離をとっただけであった。僕は体のマナを絞りきって不得意なアイスボルトを詠唱し、撃とうとすつが、追いつくはずがない。あの人はダメだ、そう思ったのだが、

 バキンッ!!

 何か氷が勢いよく割れる音がしてジャイアントヘッドレス達が凍りついていた。

 「まさか、あれアイスマインとちゃうか?」
 「へぇ~、あれがアイスマインねぇ、まるで地雷だ」
 「完成度高いねぇ、よくできてるよ」

 その場にいた三人は凍りついた巨人を見て知らない単語を幾つか並べていた。僕は小首を傾げて疑問に思っていただけだった。
 巨人が凍るのを確認した女性は、腕に装備してあるシリンダーをいじり始めた。結晶を装填してウォーターキャノンでも撃つのだろうか、そう思ったが、僕の考えは浅かった。
 その女性の腕のシリンダーからは大きな炎が噴射された。まるで火炎放射器を使っているようだ。

 「あの人はフレーマーまで使うんか、たいしたもんや」
 「でも装填がいまいちだから、初級錬金術師かな」
 「錬金術使うだけでもたいしたものだよ」

 いつの間にか僕たちはのんびり観戦している人達になっていた。しかも僕にはわからない単語を並べて会話をしている。錬金術?なにそれ、おいしいの? と心の中で呟く。

 「お? どーやらそろそろ終わったみたいや。奴等帰ってくで」
 「あ、本当だ」
 「あの二人凄いな」

 どうやら巨人は錬金術に負けたと認めて引き返していったのだろう。ゆっくり来たところを戻っていった。浴衣を着ていた男の相手をしていた巨人も、周りの状況を見て同じ行動をしていた。
 観戦をしていた僕達は、あの二人に助けられた。そう思えたのは完全に巨人の姿が見えなくなってからだった。
 浴衣を着た男性は赤いコートを着た女性に何かを告げて、ガイレフ方面へと歩いていった。その場に残った女性は僕達のほうを向いてダンバートン方面へ歩いてきた。その女性の視点はラオとアオシ君の間にいるダートに向けられているように僕は見えた。
 ゆっくりと歩いてくる錬金術師の女性は、懐から一枚の紙を取り出して僕の目の前で止まった。しかし視線はダートのほうを向いたままだった。

 「初めまして、かな。ダート兄ちゃん」

 第一声、初めましてなのにダートのことを兄と呼ぶ。その場にいたダートとアオシ君、ラオ、もちろん僕もわけがわからないような顔で呆けていた。ダートの口からは 「は?」 と言う声も漏れていた。

 「あ、あのさ。初めましてって?」
 「ワタシも最近知ったんだ。兄がいるって事。その兄がダートだってことが」
 「ダートに妹いたの?」
 「オレも今はじめて知ったぞ・・・」

 わけがわからなくなり、僕とラオやアオシ君は頭の上にクエスチョンマークを浮かべて小首を傾げいた。ダートも何かを真剣に考えている。

 「俺に妹? マヂで?」
 「うん、ダートの妹、シラセだよ」
 
 かわいく微笑みを浮かべて、シラセと名乗った女性は握手をダートに求めた。どうやら彼女もダートと会うのは初めてだとか。よくわからない関係だね。

 「というか、誰からそんなこと聞いたんや? 兄が俺だってこと」
 「え~っとねぇ~、フクロウ便で届いた手紙だったからわからないんだけどね、ダートと会ったらこれ渡しておいてくれだって」

 そういってシラセはコートの内側のポケットから数枚の紙切れを出してきた。緑色の紙で、何かの通行証か入場証を思い浮かばせるようなものだ。
 ダートはそれを受け取って紙切れを見たが、よくわからないような顔をして考え込んだ。何が書いてあるか、アオシ君やラオはダートの隣から覗いていたが、ちっちゃい僕はそれを見ることができなかった。身長が小さいと不便なことが多いと最近思い始めた元16歳少年。

 「イメンマハで行われる昇級試験らしいけど、ワタシそんなのサッパリだからよくわかんないや。渡せとしか書いてなかったし」
 「俺もようわからんわ。この指定された日にイメンマハ行けばいいっちゅうことか?」
 「そうなんじゃない? 毎月5の倍数の日って、あと3日後か」
 「なんで一枚じゃなくて4枚なの? ほかに誰か渡さなきゃいけない人とかは?」
 「なんて書いてあるの~。み~え~な~いぃ~」

 ジャンプをしてまで見ようとしていた僕にダートは一枚だけその紙切れを渡してくれた。その紙に書かれていた内容は、とにかく割引券みたいなものだった。
 昇級試験のことなんて聞いたこともない田舎育ちの僕は書かれている内容が割引券以外しか理解が不能だった。毎月5の倍数の日にどこで何をするのか、後でゆっくりダートに聞いてみようとするか。
 僕はその割引券をダートに返し、最近買ってもらった小さな時計を見た。現在午後5時、そろそろ日が沈んでイウェカが昇るころ。僕は会話をしているダートとシラセを置いて狼夜にまたがり、ラオとアオシ君と共にダンバートンへ戻った。

 ダンバートン広場。相変わらず露店が所狭しと並んでいる。その光景はとても平和で、その平和な光景を見ているとさっきまで魔族に襲われていた町とは信じがたい。ラオは露店の商品と売り上げのチェックをして農場に向かうと言って去っていき、アオシ君はこれから自宅に帰るそうだ。僕と狼夜はダートとシラセの帰りを待つために広場の官庁隣に腰を下ろす。

 「平和だな、あんなことがあったにも関わらず」
 「ダンバートンの露店開いている人の殆どがダンバートンにいるわけじゃないからね、何が起こっていたかわかっちゃいないさ」

 腰を下ろしてやっと気がついたが、体の傷はかなり痛む。目立った外傷はないが、痛みというものが残っている。今日は帰ったらすぐに寝ることにしよう。
 狼夜は相変わらず無傷で、戦闘の後の気配などしない。こいつはいつどこで何をしているのかすごく気になる。物語的には肝心なときに役に立つだけの出番が少ない脇役、その程度だろう。

 「誰が脇役だって?」
 「おっと、心の声が聞こえたかな?脇役さん」

 狼夜と他愛のない、なんでもない会話をし、体の痛みを忘れて数分、赤い髪の男と赤いコートを着た女性のレッド&レッドコンビの2人が姿を現した。2人はこちらの存在に気づくと徒歩の速度を1,25倍(当社比)上げてこちらに向かってくる。

 「ここにおったんか、家に戻ってりゃよかったのに」
 「2人の帰り、待ってたんだよ、聞きたいこと山ほどあるわけじゃないけど、なんだか帰り待たなきゃいけない雰囲気だったし」
 「それはどーも、忠犬と忠狼さん」
 「あ、今バカにしたなっ」
 「ぜ~んぜん、だって狼夜は狼だし犬は犬だろ?」
 「・・・そーでしたねそーでしたね・・・どうせ僕なんて犬だよ犬・・・」
 「あ、あははは・・・仲良いんだね、2人とも・・・」
 「傍から見たら兄妹か親子だけどな、16歳と19歳なのに」

 それから少しなんでもないような会話をしてダートの家に3人と1匹で向かう。

 ダートの家の居間、フローリングの上に狼夜が横たわり、その狼夜を枕にして僕は寝転がって本を読んでいた。題名『永遠の楽園、ティルナノイ』。著者『不明』前日ダートとウリが図書館でスチュアート先生に注意されたとき、阿呆と言ってきたウリに体当たりしようと思ったが足元にあった紙切れに足を滑らし本棚へ突っ込んで本の雪崩に襲われ、雪崩の最後に落ちてきた本、らしい。ウリがそういってこの本を渡してきた。怪我の功名もいいところだよまったく。
 内容はティルナノイに行ってきた人が書いたもの、そしてそこはどのような世界か大雑把に書き記されていた。そしてスケッチか何かの絵が描いてあったりもした。見覚えのある光景も少しばかりあったりした。

 「犬はそれわかるか?俺にはさっぱりや」
 「はっきり言って、僕にもわかんないよ。どんなところか、どんな感じかくらいしか書いてないしね、この本」
 「兄ちゃん、実際行ってきた人っているの?その、てぃるなの?ってところ」
 「おるんやろうなぁ、これ書いた人とかほかにも行った人が」
 「ティルナノイ、確か魔族の地とか言われてたな、キアダンジョンに行ったときゴブリンがそんなこと言ってた」
 「狼夜、あんたキアダンジョンへ世間話や井戸端会議しに行ってるんじゃない・・・?」
 「しっかしなぁ、魔族の地が破壊されるなら別にいいんちゃうか?平和な日常が延々と続くで?」
 「たしかに」

 僕は会話をしながら一ページ、一ページ本をめくっていった。しかし、これといった情報はない。魔族に直接聞けば話は早いだろうが。

 「ん?魔族にちょくせつ、聞く?」
 「どした、犬」

 思い立ったが吉日、僕は狼夜の毛を少し抜いて開いた本に挟み、栞代わりにして本を閉じ、ダートに渡した。

 「ちょっとラビダンジョンに行ってくる。帰りは深夜になると思うから先に晩御飯済ましちゃうね」
 「ラビか、やったら俺も行こか?」
 「いあ、1人じゃないと意味がないから、早く晩御飯食べて行くね」

 台所に立って包丁で魚をさばいていたサリーに簡単な食べ物を用意してもらってそれを持ち、ラビダンジョンへと向かった。

 ラビダンジョン3層目、メタルスケルトンと骸骨狼が出てくる層、僕は眠いからだに鞭を打ち、ラビダンジョンの奥へと進んでいった。現在の時間は午前0時40分、とっくに就寝時間を過ぎている。スタミナポーションを一気に喉の奥へ流し込み、眠気を少しでも覚まして戦闘をする。メタルスケルトンは少しばかり硬いが、とても強いわけでもなく、ダンジョンの中なので一斉に襲われることなく1体1体倒していく。
 しばらく進んで、通路にあった宝箱を開けてボスルームキーを手に入れる、その頃には午前1時になっていた。最後だと自分に言い聞かせ、ボスルーム前までたどり着く。やっとの思いでついたラビダンジョンボス、長いダンジョンだから時間はかかったものの、ここまで来たらもうあとは少し。鍵を使ってボスルームに入り、目当てのモノを探す。
 ボスルームの一番奥、その目当てのモノはその場を動かないでいた。

 「あら、かわいいお嬢ちゃんがこんな時間に何の用かしら?」
 「お嬢ちゃんか・・・、まぁいいけど。サキュバス。君に聞きたいことがある」

 ブラックサキュバス。ラビダンジョンを1人で進むとボスルームにいる魔族。好戦的ではなく、人とよく似た体系をしていて、人の言葉も普通に理解し、話すことができる。ある意味人間に近い魔族だ。
 しかし、魔族に変わりはなく、いつ襲われるかもわからない。僕は身構え、交渉人のように話をした。

 「何の用?あら、わたくし、男性しか襲わない主義ですので、そのように身構えないでくださいな」
 「男性にしか襲わないって・・・別の意味で襲うのか・・・っとそれはどうでもいいことだね」

 僕は警戒態勢を解き、武器をしまってサキュバスの目の前に立って言った。

 「ティルナノイのことについて、詳しく教えて欲しい」

 サキュバスは一瞬驚いたような、それともこちらを関心したような表情をし、すぐにもとの表情に戻った。そして何か考える仕草をして口を開いた。

 「わたくし、魔族には変わりありませんが、魔族のことが嫌いでしいて、そのようなことは言いたくはないのですけど、どうしてもというのなら・・・・・・」

 妖艶な笑みを浮かべてサキュバスは僕に交渉をしてきた。

 「わたくしを、安全に人間のいる町・・・ダンバートンに連れて行ってもらえません?」
 「・・・・・・は?」
 「ですから、わたくしを――――」
 「いあいあいあ、わかる、意味はわかるけど・・・。その意図がわからないくて・・・」
 「先ほども言いましたように、わたくしは魔族のことが嫌いなのです。魔族の自分が言うのもあれですが、わたくしは人間の、特に男性のほうがよっぽど素敵かと思いますわ」
 「はぁ・・・・・・」
 「ですから、わたくしをダンバートンまで連れて行ってもらえません?」
 「1人で出れないの?そんなことくらい」
 「えぇ、出れないのです。わたくしはこのダンジョンのボスモンスターなのですから」
 「じゃあどうやって君をここから?」
 「簡単なことです、わたくしを行動不能になるまで殴るなり蹴るなりしていただいたあと、わたくしをこのダンジョンから引きずり出すのです」
 「えっと、つまり・・・。君を一回倒してここから引きずり出すってこと?」
 「えぇ、しかしもう二度と目を覚まさないような体にしない程度にお願いしますわ」
 「う、うん・・・わかった・・・」
 「あ、それと」
 「まだ何かあるの?」
 「これ、前に太った女性がここに来ていきなり襲い掛かってきたので、返り討ちにしたら落としていったものですわ。欲しかったらどうぞ」

 そういって渡されたもの。一枚の手紙か何かだった。その内容は。『ザルディン温泉旅行券』と書いてあった。
 この前来た人がものすごく気になるところだが、今日以外でも聞くタイミングはあるだろうと思い、その招待券を懐にしまい、ちょうど持ち合わせていた鈍器を構える。
 ベキッ!

 「きゅぅ~・・・・・・」

 頭を鈍器で殴った瞬間、サキュバスは糸が切れた人形劇に人形にようにその場に倒れていった。相手は魔族だが、人間以上の美貌を持つ魔族を鈍器で殴ってしまったことに少し罪悪感を感じ、力尽きたサキュバスをダンジョンの外に出すために持っていた女神の翼でダンバートンへ飛んだ。

 ダンバートン広場、深夜にも関わらず露店が並び、人が行き交う場所、その場所に普通なら寝ているはずの歳の少女と気を失っているサキュバスがいれば、たちまち注目を集めるのは必然、今僕はものすごく周りから視線を浴びている。誰も声をかけてくれないところ、すごく不安な気持ちになる。
 そんな気持ちを持ちながらも、サキュバスを引きずってダートの家に戻るべく道をゆっくりと進んでいく。引きずられているサキュバスは規則正しい寝息を立てている。殴られたにも関わらず寝ているのと同じ状態にあるところ、人間ではないと思わされる。
 しばらくサキュバスを引きずってダンバートンを移動し、やっとの思いでダートの家についた。
 窓からは明かりが見えない。みんな寝てしまったのだろうか、玄関だけは開いていて欲しいと思い、ドアの取っ手に手を伸ばし、開けようとした。

 「お、開いてた」

 深夜3時40分、こんな時間まで鍵が開いているのは危ないのだが、僕が外出していたからなのだろう。その気遣いに感謝し、サキュバスを引きずってダートの家に入る。
 居間の電気はついておらず、廊下まで真っ暗だ。僕は物音をたてず、サキュバスを引きずって廊下の奥へと進んでいく。自分の部屋に前についてドアを開ける。
 窓からはイウェカの光が差し込み、わずかに明るさがある。部屋の電気をつけてサキュバスを中に引きずる。引きずられながらもサキュバスは規則正しい寝息をたてている。本当にただ寝ているだけならば、ものすごく寝入りが深い。というか寝ボスケだ。
 部屋の隅の方にある一人で寝るには丁度いい大きさのベッドにサキュバスを寝かし、自分の部屋を出た。今日の僕の寝場所は居間にしよう。
 ゆっくり物音を立てずに居間に入る。暗闇が支配する居間では目に見えるものは何もなく、自分の記憶だけが頼りになる。僕はソファの位置を思い出してゆっくりとソファに近づく。
 数歩進んでやっとソファに辿り着き、それに腰を下ろし、横たわる。汗の臭いがとても鼻に届き、嫌な感じがしたが、今は睡魔のほうが一枚上手だったようだ。僕は汗の臭いを気にしながらゆっくりと瞼を閉じた。



 午前8時

 「うぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 爽快な天気の朝にダートの家で悲鳴というより叫び声が聞こえた。ダートの家に居たサリー、シラセ、僕は同時に目を覚まし、悲鳴のする場所、ダートの部屋へと走った。

 「何?! なんなの?!」
 「どうしたのお兄ちゃん!」
 「ダートど~したの~?」

 朝早くから叫び声が響いて回り近所に迷惑だ。実際僕はソファの上で気持ちよく寝ていたのに悲鳴によって起こされたのだから。
 サリーは、文字通り部屋の扉を蹴飛ばして中へと駆け込んだ。扉の金具が外れて勢いよく飛んでいったが、今はそんなこと微塵にも気にしないだろうなーなどと僕は思っていた。
 部屋の中へ入って、サリーとシラセは唖然としていた。何でそんな反応するのだろうと思い、僕も中へと入り状況を確認した。すると、昨日の‘アレ’がいたのだ。

 「あちゃ~・・・、こんなことになったか・・・」

 僕はボソリと独り言をして昨日のことを思い出した。正確に言えば今日で、自分の部屋に連れてきたモノがダートの部屋に来ていたのだ。

 「ななななな、何でここにサキュバスがおるんやぁぁぁ~!!!」

 そう、昨日ラビダンジョンから連れてきた、というより誘拐してきたサキュバスが、ダートの部屋の、ダートの寝ているベッドに、ダートの隣で寝ていたからだ。
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ダート&リヴァリス

Author:ダート&リヴァリス
ダート:現在マビノギは引退、ルーセントハードや別のオンラインゲームへ移転

リヴァリス:マビノギプレイヤー。紹介なんていらないと思います

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